オーストラリア、新型コロナウィルスとその影響

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オーストラリアも新型コロナウィルスの感染者数がこの1週間で爆増しました。政府の発表では今月初めはまだ感染者数は50程でしたが、先週末には200前後そして現在(2020年3月21日現在)は874と短期間で急増していることがわかります。

新型コロナウィルス感染者数 – 数値で比較

日本は昨日現在で943です。日本が先月急増し、今月は新たな感染者数はあまり増加していないことを考えると、オーストラリアの感染者数は来週には日本を追い越しても不思議ではありません。そして、日本は人口が1億2千600万人程、オーストラリアは2,500万人程ですので、人口に対する割合で比べた場合、オーストラリアの方がより深刻だと思います。日本ではメディアや政治家が国の対応の遅れや不備を批判、指摘するなど、ネガティブなコメントを多く流しているかもしれませんが、最近のオーストラリアや世界のニュースでは日本の新型コロナ対策を素晴らしいと評価する声が多くなってきているように思えます。

そしてヨーロッパもイタリア、スペイン、ドイツ、フランスなどを中心に感染が急拡大していて封鎖を行っております。今朝もEUが域外からの入国を完全に禁止(在住者を除く)する表明を出しました。これらの国は感染者数は1万人を超え(イタリアは4万超え)、人口は6,000万人から8,000万人程ですので、やはり日本の方がうまくコントロールしていることがわかります。

オーストラリアの状況 – 町中、スーパーの様子

私は現在シドニーに住んでいるので、ここで述べるのはあくまでシドニーでの様子ですが、現在は他の地域も同じような状況だと思います。

シドニーでは2月はまだまだコロナに関して心配している人はいなかったと思います。マスクをしているのは中国人と思われる人たちだけ。白人はもちろんアジア系の人もまだそんなにマスクはしていなかったと思います。12月、1月が毎日のように森林火災のニュースで日々の生活への影響が心配されていましたが、1月下旬に多く雨が降ったことも手伝ってか、2月はようやく報道もなくなってほっとしたところで、コロナの話は対岸の火事、他人事といった感じでした。

しかし、2月の末にはトイレットペーパーがスーパーから消えるというのがメディアで放送され、3月に入ると次第にトイレットペーパーだけでなく、パスタ、コメ、インスタント食品、サニタイーザー(ハンドソープ)などもスーパーから姿を消しました。今週は更に店舗によっては肉類などの冷蔵品も完全に棚から消え、冷凍食品などももうないので、これがパン、野菜、魚、果物などの生鮮品などに広がっていかなければ良いなと危惧しているところです。

オーストラリア政府の対応

オーストラリア政府は3月に入っての感染者の急増や世界とりわけヨーロッパでの感染拡大の状況を鑑みて、3月13日以降、日々規制を設けあるいは既存の規制をさらに強化してオーストラリア国内での感染者数を抑える動きに出始めました。屋外での大規模な集会、イベント等の禁止、屋内での小規模集会イベントの禁止、オーストラリア人の海外渡航自粛→のちに海外渡航禁止へ発展、入国者の14日間の自主隔離→のちに外国人の入国禁止に発展など。

<追記 3/24>

シドニーがあるNSW州、メルボルンがあるVIC州、キャンベラのあるACT(首都特別地域)の各州、特別地域の政府ではパブやレストランなどの生活上必要不可欠でない一般的なサービスを提供するお店の閉鎖を3月23日より命じました。

また、国外だけでなく州をまたぐ旅行も必要性が低いものは禁止されました。現在、NSW州、VIC州、TAS州、SA州、WA州が州境を閉鎖している状況です。 <4月7日訂正>NSW州、VIC州、ACT首都特別地域は4月7日現在州の閉鎖は行っておりません。

オーストラリア社会への影響

今週はオーストラリアのスコットモリソン首相が連日上述の制限を設けたため、経済への打撃が計り知れないものとなりました。まず、オーストラリアのカンタス航空。カンタスといえば日本で言うならJALやANAで、オーストラリアを代表する企業です。そのカンタス航空が2か月間国際線全便欠航と全従業員の3分の2にあたる2万人の従業員を休職としました。そして、スポーツ、音楽、催事など様々なイベントがキャンセルとなり、企業も出張の中止やできる部署、オフィスから social distancing や remote work を開始し始め、町中を歩く人や電車などの交通機関を利用する人も少なくなってきています。これによって、航空業界だけでなく、鉄道、バスなどの交通機関やホテルや飲食店、各種小売店などのサービス業も甚大な影響を受けていることが想像できます。

<追記 3/24>

上述の通り昨日から一般的なお店も閉鎖を余儀なくされたので、多くの人が職を失って日本のハローワークのようなところに失業手当の申請をする人の長蛇の列ができていることをニュースで報じています。今のところはカフェやレストランなどサービス業に従事している人が多いようですが、今回の措置は単にサービス業(川下)だけでなく、そこに納品する卸や輸入業者、そして商品、製品を生産するメーカーやメーカーに部品を提供するパーツ、部品屋さん、そこに素材を提供する原料メーカーなど徐々に川上にも影響が出てくるのは想像に難くないです。政府がこの措置をいつ解除するかはわかりませんが、長期化すればするほど経済全体へのダメージは壊滅的になると思われるので政府としても一気に収束に持って行って解除を宣言したいのではないかと思われます。個人的には1か月程度であれば、V字回復も早いかなと思いますが、数か月、半年などに及ぶと全ての産業にとって大ダメージとなるのではないかと思われます。

週末の電車はガラガラ(他の車両も同様)

オーストラリアに留学やワーホリを考えられている方

現在は外国人(オーストラリア居住者を除く)のオーストラリアへの入国が許されていないので、留学やワーホリを開始することはできません。入国禁止発表前に留学手続きなどを済まされていた方は留学先の学校や留学エージェントを利用している方はエージェントの方にコンタクトを取ってアドバイスを求めてください。入国禁止前にワーホリビザを取得された方は在日オーストラリア大使館に確認されるのが良いかと思います。

入国禁止がいつ解除されるかは政府からの明言はされていないので、2,3か月の事なのか、もっと長期なのか誰にもわからない状況です。ただ、政府としては新型コロナの問題が沈静化されるまでには最低でも6か月くらいはかかるのではないかと、記者からの質問に答えていましたので、9月ごろまでは解除されない可能性もあると考えることもできるかと思います。一方で、日本やオーストラリアでも新型コロナウィルスに有効な薬の研究が進められていて、有効と思われるものを現在実験しているというニュースも流れていますので、有効な薬が見つかって、量産されれば一気に収束に向かっていくのではとも考えられます。

また、現在の状況を踏まえて多くの人が雇用への不安を抱いています。とりわけ今回の措置で大打撃を受けているサービス業では多くの企業で現在コストカットの第一段階としてカジュアル職(バイト職)はシフトに入れないという対応をしていると思われます。そして倒産による失業、不景気に伴う解雇というのが増えることも今後想像されるので、失業率も倍増あるいはそれ以上に上がるのではないかと思われます。新型コロナウィルスの問題が沈静化されれば、まずローカルの人から雇用を補充してくことが再開されると思われますので、今年いっぱい、長引けば来年前半とかも留学やワーホリで新たにオーストラリアにやってくる方には仕事をゲットするのは厳しいかもしれません。