日本ではバブル崩壊以降、資格ブームになって会計関連の資格は人気資格の代表となりました。簿記や公認会計士、税理士資格はその代表となっていて、それらの資格を取って会計事務所や企業の経理、財務部に勤めたいと考えている人も少なくないと思います。海外でも同様に会計の勉強を大学、大学院でしてCPAを勉強して会計事務所や企業の経理で働くのが人気となっています。
かつてはどこも営業が花形部署で経理などの裏方部門は「お前らは俺らが売り上げを作ってるから食べていけるんじゃー。」という感じで下に見られがちでした。そして、一般的には何となく経理というとデスクで電卓をひたすらたたく根暗なイメージ?(悪意はありません。部活で言えば卓球部のような)ではなかったかと思われます。それがなぜ花形部署になっていったのでしょうか?
1. 時代の流れ
日本は敗戦後すべてを失い、何もない状態から高度経済成長、バブル期へと突入していきましたが、その頃は物が十分に行き渡っておらず、作れば欲しい人、必要な人がいて作れば売れる時代でした。
しかし、90年代に入り経済が成長しきって飽和状態になり作っただけでは物が売れなくなった時代に突入。家にはテレビ、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、パソコンなど生活に必要なものはどこの家庭にも当たり前にあるような時代になり、壊れたりして買い替えるときぐらいしか売れない、あるいは競合他社が多数同じような製品を出していて消費者からすると選択肢は無数にあり自社の製品を選んでもらえる確率が低くなった、選んでもらうために膨大な努力・労力(価格競争、広告宣伝、マーケティング、機能・デザインの優劣など)が必要になり、ただ作っただけでは売れない時代に入りました。そして、バブル崩壊によってすっかり消費が冷え込み、企業はコストカット、効率・生産性の向上が重視されるようになり、その結果として経理が定期的に作成する損益計算書や KPI などの戦略的な数字の分析をするスキルも社内全体で必要とされるようになり、数字の分析を得意とする経理部門は花形部署に挙げられるようになっていったと思います。
まぁ、こういった話は若い世代の方からすると「ふーん、そうなんだ」と思うかもしれません。恐らく現在の人気の理由は以下に述べるポイントが主流だと思います。
2. 高い専門性
会計や経理といえば簿記や公認会計士、税理士といった資格が必要であったり、それらの勉強が必要になります。例えば、上述の資格をゲットして会計事務所に勤務してその後、税理士、公認会計士として独立開業あるいは企業で経理、財務などの部署に就いて損益の分析などを行い、ステップアップしながら経営陣の仲間入りをするもしくは経営目線やノウハウなどを養っていくなど他の部署にない魅力があります。また、簿記1級や税理士試験、公認会計士の試験は日本にある様々な資格の中でも難関資格の代表に挙げられステータス性もあるので、ステップアップしていったり、転職したり、果ては税理士、公認会計士であれば独立開業して自分がその事務所の長になるというのも夢ではありません。
また、企業の経理スタッフでも月次決算に関われば、そのオフィスの所長なり支店長なり社長なりのお偉いさんから数字に関して直接的あるいは間接的に質問が来るかもしれません。そして、「ここの費用が掛かりすぎだな、もっとけずらなきゃ」など経営陣の目線、考え方がそう言ったやり取りを通じて見えてくるのが一番のメリットだと思います。他の部署ではこういった会話は部門長レベルでないと耳にすることはないと思います。例えば営業スタッフはある月に突然営業部長の上司から今月からxxしろとそれまで言われたことのない戦略や目標など指示されて「何で急に?」と思ったりすることもあると思います。しかし、通常そのような場合、部門長クラスのミーティングで社長なりオフィスのトップなりから指示されたことで、それはその月の損益やその他のKPIの情報を見て指示が出されることが多いです。上述の通り、経理という部署にいるとスタッフでも割と社内の上層部のコミュニケーションを耳にすることが出来、何故急にそうなったかの背景がわかることも多々あり、その会社の経営戦略や方針などが肌感覚でより身近に感じることが出来ます。
3. 安定した職業
簿記や税理士、公認会計士の資格は難関資格の代表でありステータス性があるのでそれをゲット出来れば社内での昇進や転職に有利と言われています。
また、通常、企業の経理部門は間接部門と呼ばれ売り上げを作らない部署とされています。そのため、経理は通常必要最低限の人数しか雇っておらず、経理部門で仕事をゲット出来ればよほどの事情がない限りクビにされたりすることなく長期で働くことが可能と言われています。収入も営業のように成績によってボーナスが上下して年収が変わってくるということもないですし、成績不振を理由に解雇されたり左遷させられたりとかもないです。またアフターファイブのお付き合いもあまりないところが多いと思います。なので、やるべきことをやったらあがってアフターファイブはプライベートの時間に割きたいという考えの人には魅力的だと思います。
ただし、誤解していただきたくないのは楽が出来るということではなく、資格によりその人のスキルが明確化され他の経理社員とのスキルの比較が容易であったり、人気職種であるにもかかわらず必要最低限の人数しか雇っていないということもあり、一人二役あるいは三役こなさなければいけないところもあると思います。そして少ない人数とはいえ上へ上がれる数は通常一人に限られているので競争はあります。ほかの経理社員が税理士資格をとって自分はまだとなればどちらが昇進に有利かは想像がつくかと思います(もちろん、上に行けば行くほどコミュニケーション能力やインターパーソナルスキルなども重要になってくるので、資格が全てとは言いませんが)。また、会計のルールや税法などは頻繁に改定されますので(消費税が最近の例です)、プライベートの時間に常に自主的にスキルアップや情報のアップデートをしておくことが必要になります。若い人ほど最新の情報を頭に叩き込んでいたりスキルアップに意欲的なので、中堅になって自分がアップデートできていないと下からの評価もシビアになり辛くなるという可能性もあります。
4. 海外でも人気の職業。将来的には海外就職も?
会計士や経理という職業は海外でも同様に人気の職業です。オーストラリアやニュージーランド、カナダでは会計の知識を持つ人材が恒常的に不足していて、長い間移住を希望している人に対し現地の大学や大学院で会計系の学部や修士を卒業しCPAの資格を得れば、就労ビザや永住権を取りやすくするような政策が取られてきました。オーストラリアに関しては、近年会計士の需要過多の傾向にあり、方針が転換されてきていますが、それでも会計は根強く人気資格の代表です。
日本の外資系企業で経理経験を積めば将来は海外の現地企業の経理部門で働くことも夢ではないかもしれません。実際に私はそうしてきましたが(こちらを参照)、今はまだ実例としてはものすごく少ないと思いますし(海外の大学・大学院で会計を勉強して卒業後現地で就職というのは別として)、大卒から実現するまでに15年以上かかっています。ただ、グローバリゼーションがもっと進めば、20代は日本で経験を積んで30過ぎから海外に挑戦というのも10年後とかはもっと実例として出てくるのではないかと思います。
Leave a Reply